私は、ずっと逃げていた。

彼との関係と向き合うのが怖くて、今までずっと逃げていた。


でも、ようやくその問題と向き合う覚悟ができて、
彼に何ヶ月ぶりかで電話をした。


そして、彼の口から、終わりを告げる言葉を聞いた。


今の弱い自分では、私と一緒にいることはできないということ。
そしてこの先もおそらく、その状態は変わらないということ。
今まで辛い思いをさせてしまって悪かったということ。


「本当にごめんな」


その彼の言葉に、絶対泣かないって決めてたのに
溢れる涙を堪えることができなかった。


「○さんは悪くないよ。これはしょうがないことだったんだよ。
　それに私、幸せだったよ。
　悲しいこともあったけど、それ以上に幸せなことの方が多かった。
　私をいっぱい幸せにしてくれて、本当にありがとう」


そう言うと、受話器の向こうで、彼が泣いているのが分かった。
付き合ってから初めて知った、最初で最後の彼の嗚咽だった。


そして私は少しずつ、
どうしても最後に伝えたかったことを、彼に話した。


ひとりぼっちで、ずっと寂しかったこと。
悲しみを解ってもらえなくて辛かったこと。
それでも、どうしても、嫌いにはなれなかったこと。
だけど、少しずつ気持ちが離れてしまっていたこと。
本当はあの日、「ずっと一緒にいよう」って言いたかったこと。
あなたは、私にとって太陽みたいな人だったこと。
たくさんの幸せと、安らぎを私にくれたこと。
こういう結末を迎えることになってしまったけれど、
あなたに会えて幸せだったと、どうしても伝えたかったんだ。


「幸せにしてくれて、ありがとう」
この言葉を、ようやく彼に伝えることができた。

そして、最後にやっと、私たちはお互いに向き合うことができたんだ。


ここまでくるのに、私はどれだけ泣いただろう。
どれだけ自分を責めて、傷つけてきただろう。


「全部、俺が悪いんだ。三日月は何も悪くない。
　だから、自分を責めるな」


うん、そうだね。
もう私、自分を責めるのはやめるんだ。やめたんだ。
あなたもだよ？
あなたも、何も悪く無い。
だから、あなたも自分を責めてはだめだよ。
誰も悪くない。
あなたも、私も悪くない。
だから泣かないで。
そしてどうか、幸せになって。


もう２度と、その名を呼ぶことも、
会うことすらないかもしれないけれど、
どうか、元気でいてほしい。
幸せになってほしい。
私もがんばって幸せになるから。
絶対、幸せになるから。


さようなら。
私の大好きだったひと。


本当に、さようなら。








よかったね、私。
最後にちゃんと、「ありがとう」って言えてよかったね。

だからいつか、もしも偶然どこかで会ってしまっても、
きっと笑顔でいられるね。
「元気？」って笑顔で言えるね。